不動産競売においては、通常の不動産取引と比べて大きく異なる以下のような市場の特徴があります。
まず、競売においては、売主である所有者が強制的に所有物の売却を迫られる立場であることが多いので、売却に際してその協力が得られないのが通常です。本来、対象物件の価格に影響を及ぼす重要な要因は、売主からの詳細な開示があって初めて掌握できることが多いものです。売主の協力が得られない場合、買主から見た場合対象物件のリスクが十分に解明できない可能性があります。買受希望者としては自ら対象物件を見ることができれば望ましいのでしょうが、内覧制度によるほかは事前に物件を内覧することはできず、また、内覧制度による内覧にも各種の制約があります。
これらの状況を反映し、競売物件は瑕疵担保責任を負わない定めとなっています。本来あらゆる売買契約において瑕疵担保責任というものが民法で定められており、買主が売主から購入した後、隠れた瑕疵が見つかり、それにより売買の目的が達せられない場合、買主は契約を解除できます。一般的な「隠れた瑕疵」とは、買主が通常の注意では気づかないレベルの瑕疵を言い、売主自身が気づかなかったものも含みます。住宅の瑕疵として考えられるのは、雨漏り、シロアリ、その他手抜き工事等などがあげられるでしょう。通常の売買においては瑕疵担保責任を売主に追及することができますが、競売においては、瑕疵担保責任を追及して損害賠償を請求したり、売却契約を解除したりすることはできません。
さらに、買主から見た場合、強制的な売却という状況に迫られた物件であるということから、競売物件であるがゆえの心理的抵抗感があることも否めないでしょう。
また、手続の面から見ると、競売物件に関する情報の提供期間が、通常の不動産取引よりも短期間であること、入札にはあらかじめ保証金の差し入れが必要である上、残代金も指定された期日までに一括して即納しなければならないことなど取引に特殊性があります。さらには、物件の引渡しを受けるために法定の手続が必要となる場合があることなど、通常の不動産売買とはかなり異なる手続を経ることになります。
以上のようなことから、通常の不動産取引と比較すると、不動産競売は市場での競争条件において不利な点があることは否定できません。このような競争条件の不利を十分に考慮し、「競売市場修正」など価格に対してマイナスの影響を与える修正要因を考慮して評価が行われています。